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島澤様、
お便りありがとうございました。こちらこそ何の音沙汰もしないままで失礼いたしま
した。
個人的な近況から申し上げると、この10月の初めから、2年間のUNとの契約が新た
に始まりました。
こちらの火山は7月12日に2年間に渡って成長し続けていた火山ドームがとうとう
瓦解して、多量の火山灰が島全体に降りました。現在も灰の除去作業が急ピッチで進
められていますが、この除去作業に日本円にして約5.5億円が英国政府から投入さ
れました。これは向う数年間のモンセラート政府の国家予算の一部の前借で賄われて
います。その意味するところは、今後の緊縮予算によって、現在設計段階、あるいは
予定されている建築プロジェクトが先送りまたはキャンセルされる恐れがあること
で、そうなって私の仕事が無くなった場合には2年の契約を短縮して帰国することに
なると思います。とはいえ、昨年9月に避難勧告が出されて以来、仮住まいを余儀な
くされていた火山付近の住民にとっては朗報この上なく、まだまだ灰だらけですが、
クリスマスを自宅で迎えられることがなにより励みになっているのではないでしょう
か。
英国や米国などに避難した家族の帰省ラッシュも始まりました。95年に避難が始
まって以来もう8年以上が経過して、当時の小さい子供達はすでに避難国で働き始め
ているか大学生です。家族が寸断されたままその地に根付かざるをえないのはとても
悲しいことです。それらの子供達の中にはは自分のアイデンティティーを見失って悩
んだりする子もいると聞きます。これらの避難国には避難住民のコミュニティーが
あってお互いに助け合っていますが、その活動は悩んでいる子供や、個々の家族に対
して解決の糸口を与える役割を担えるし、故郷の存在を常にアピールする発信地とし
ても重要であると思います。もっと活発に活動してもらいたいものですが、「島に
残った者と、見捨てた者」の間には溝があって、簡単には埋められないようです。
三宅島の皆さんの願いが火山に届いて、早く火山ガスの流出が収まることを私も祈っ
ております。
あつみ拝
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